社会全体のデジタル化を目指すデジタル改革関連法案が2021年5月に成立し、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」の施行に伴う規定の整備を行う政令等が2022年4月22日に閣議決定されました。
2022年5月18日が「宅地建物取引業法及び高齢者の居住の安定確保に関する法律等」の施行期日となったことから、現在、不動産関連文書は売買契約書を始めとしたさまざまな書類の電子契約が認められています。
今後はオンラインを活用して活発に不動産売買が行われると考えられます。
電子契約の概要や、対応可能な範囲などを解説します。
電子契約とは?
デジタル改革関連法案が2021年5月に成立し同年9月から施行されたことで、多くの書類が電子化されるようになりました。
2022年5月には、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」(デジタル改革関連法)の整備の一環として、48の法律で書面・押印に関する法改正が行われたのです。
宅地建物取引業法もこの48の法律の中に含まれており、この改正によって、不動産業界の契約を電子契約にすることが可能になりました。
電子契約とは、契約書を電磁的記録によって取り交わすことを言います。
従来の紙の契約書とは違い、電子契約では非対面でも契約ができるようになりました。
契約手続きを非対面で行えるようになるため、フロントオフィス業務、バックオフィス業務が軽減されます。
このような背景から、電子契約を導入する企業は増えつつあります。
では、電子契約と紙の書面での契約とではどのような違いがあるのでしょうか?
その具体的な違いについて、解説します。
従来であれば、取引の条件を交渉して合意に至った際、その証明として紙の契約書に双方が署名し、印章を押印することで契約が成立していました。
しかし、電子契約の場合はそれができません。
書類は紙ではなくPDFファイルで、電子データとして作成されることになります。
その際、書類のデータを改ざんされないようにする必要があります。
そのために使われるのが、電子署名です。
電子署名は、第三者に改ざんされていないということを証明するために用いられます。
有効性については、電子証明書によって本人性が担保され、タイムスタンプによって改ざんされていないことが担保されるようになっています。
電子契約については、2つの法律が関わっています。
電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)と、電子帳簿保存法です。
電子署名法とは、その成立によって電子契約が広く認められるようになった法律です。
電子署名法が施行されたのは2001年4月で、本人による電子署名がある電子文書についてその有効性を認める、という法律になっています。
また、電子帳簿保存法は国税関係書類を中心に関係する法律です。
その関連書類について、一定の条件を満たしている場合は電子データでその書類を保存してもいい、と認めています。
電子契約で対応可能な範囲は?
2022年5月の宅地建物取引業法の改正前は、賃貸契約の更新にかかる合意書や駐車場の契約については、電子化契約が可能でした。
今回の改正により、賃貸・売買契約における重要事項説明や契約書の電子化も認められるようになったのです。
重要事項説明書(35条書面)は、書面交付と対面による説明を長い間義務付けられていました。
その後、2017年10月から賃貸において、また、2021年3月には売買においても、双方向でやり取りできるIT環境等の国土交通省が定めた事項を満たしている場合に限り、Zoom等のITを活用した重要事項説明(IT重説)が可能になりました。
ただし、この場合も書面の郵送と宅建士の押印が必要だったのですが、2022年5月の宅地建物取引業法の改正により、電子書面交付が可能になりました。
メールやダウンロード形式で書面を提供することができるようになり、宅建士の押印は不要になったのです。
また、宅地建物の売買・交換・賃貸契約等締結後の交付書面(37条書面)についても、宅建士による押印が必要だったのが、2022年5月の宅地建物取引業法の改正により、電子書面交付が可能になり、宅建士による押印は不要になりました。
それ以外に、媒介・代理締結時の交付書面や指定流通機構(レインズ)登録時の交付書面も電子交付が可能になります。
電子契約では、電子契約書や重要事項説明書などの有効性を担保するため、契約書でいえば押印に該当する電子署名を用います。
それによって、電子契約が成立するのです。
電子署名は、一般的な不動産取引では、売主や買主、貸主や借主などが行います。
それに加えて、重要事項証明を行う宅建士も契約に関わるため、電子署名が必要です。
電子契約では、電子データをメールなどでやり取りするため、メールアドレスの確認と本人確認が必要です。
なりすましなどのリスクを排除するためにも、電子契約サービスなどを用いることで本人確認ができる仕組みを導入したほうがいいでしょう。
従来の書面契約とは違い、電子契約になった場合は手書きの署名や押印が必要ありません。
デジタル改革関連法が施行されるのに伴い、押印義務も一部廃止されます。
電子契約には収入印紙も不要なので、コストカットにもなるでしょう。
まとめ
不動産業界にも、徐々に電子契約が浸透してきています。
まだすべて電子契約に切り替わっているわけではありませんが、切り替えを認められる範囲も徐々に広がってきています。
電子契約になると、直接店舗に赴かなくても契約を結ぶことができるようになります。
その分、効率的に業務を進められるようになるため、導入を考えてみてはいかがでしょうか。