不動産業界では、不動産表示規約、およびその施行規則が改正され、2022年9月1日から施行されることとなりました。
この改正で、どのような変化が訪れるのでしょうか?
強化される規定と緩和される規定とがあるので、それぞれの変化について具体的な内容を解説していきます。
強化される規定とは?
不動産公正取引協議会連合会は、不動産の表示に関する公正競争規約(不動産表示規約)、並びにその施行規約の改正案について、公正取引委員会、消費者庁の認定、承認を
受け、2022年9月1日から施行されることを発表しました。
施行後の変更点として、まずは強化される規定について解説します。
なお、これまでよりも詳細な表示が必要になるものや、説明する箇所が増えるものを、強化する規定としています。
まず、交通についての表示が変更されることとなりました。
分譲住宅で販売戸数が2戸以上の場合、これまでは最も近い場所にある住戸までの徒歩でかかる時間を表示することになっていたのですが、それに加え、最も遠い場所にある住戸までの時間も表示することと変更されています。
例えば、複数棟ある新築マンションなら、最寄り駅から最も近い棟と最も離れた棟のそれぞれの出入り口までの時間を記載しなくてはいけません。
これまでは最も近い棟のみ記載すれば良く、例えばそれが歩いて5分であれば「徒歩5分」と記載しても問題ありませんでした。
しかし改正後は、最も離れた棟についても記載する必要があります。
仮にそれが徒歩8分であれば、「徒歩5分から8分」といった書き方をしなくてはいけないのです。
これは、駅から住戸までに限ったものではなく、住戸から市役所等の施設までの距離を示す際にも適用されます。
例えば、「市役所まで240m、徒歩3分」から、「市役所まで240m~400m、徒歩3分~5分」と書くことになるのです。
また、通常時よりも通勤時のほうが著しく時間がかかる場合、通勤時にかかる時間を記載することとなっていましたが、朝の通勤ラッシュ時と平常時のそれぞれの所要時間を併記して記載できるように変更されました。
例えば、最寄り駅から大きな駅までの所要時間を、「通勤特急で25分※平常時は特急で18分」というように記載できるようになります。
乗り換えが必要な場合は、そのことを書かなくてはならないという規定もあったのですが、これについては、乗り換えを要する場合はその旨を明示したうえで、乗り換えに要するおおよその時間をトータルに含めることと変更されました。
そのため、最寄り駅から大きな駅までの時間であれば、「※○○駅で××線に乗り換え ※上記所要時間には乗換・待ち時間も含まれています」と記載する必要があります。
物件の起点は、マンションやアパートの場合は建物の入り口からとすることも、今回の改正で決まりました。
そのため、サブエントランスなどを起点とすることはできなくなります。
さらに、これまでの規定であれば、最寄り駅などから物件まで徒歩で何分かかるのかを記載していたのですが、今回の改正で、物件から最寄り駅に向かう際の所要時間に変更されました。
なお、バス停の場合も同様で、物件から最寄りのバス停までの所要時間を明記しなければなりません。
そのため、物件によっては若干の差が生じる可能性があります。
そのほか、特定事項があった場合は明示義務があったのですが、それも変更されています。
例えば、土地が擁壁(傾斜地などで見られる、崖や建物の崩壊防止のために造られる壁のこと)に覆われない崖の上、もしくは下にある場合はそのことを書かなくてはいけないという義務があったのですが、改正後は、建物を建築する際に制限のある物件であれば、その内容を記載することになります。
そのため、「本物件は擁壁に覆われてない崖下にあるため、建築する際は、建物の主要構造部を鉄筋コンクリート造にする必要があります」等の記載をしなければなりません。
このほかに、インターネット広告については、必要な表示事項として「引き渡し可能年月(賃貸物件の場合は、入居可能時期)」と「取引条件の有効期限(分譲物件のみ)」についても追加して表示することとなりました。
また、一等売りマンション・アパートの場合は、その旨や建物内の住戸数、各住戸の専有面積なども明示する義務が生じています。
緩和される規定とは?
今回の改定では、緩和される規定もあります。
どのような規定が緩和されるのか、解説します。
まずは、物件の名称についてです。
改正前は、物件から直線300メートル以内で使用できる名称として、公園・庭園・旧跡等となっていました。
しかし、今回の改正で、物件が海や湖沼、河川の岸や堤防から直線で300メートル以内にある場合は、その名称も使用できることになりました。
街道の名称については、これまでその街道に面している物件でなければ使用できなかったのですが、直線で50メートル以内なら使用可能と緩和されています。
改正前は、未完成の新築住宅の外観写真を掲載する場合、その建物と規模や外観、形質などが同じであれば、他の建物の外観の写真のみ使用が認められ、その際は、他の物件の建物であることを記載する必要がありました。
しかし、改正後は、同一ではなくても、取引する建物の施工者が過去に施工した物件で、構造・階数・仕様が同一で、規模や形状・色が類似したものは掲載可能となります。
ただし、その際は取引する建物と異なる部位を記載しなければなりません。
そのため、「施工例。実物とは外壁の色が異なります。」などと明記したうえで、他の物件の写真を掲載できるようになります。
学校やスーパーなどへの距離は、物件からの道路距離を表示することと規定されていたのですが、徒歩所要時間の表示も可能となりました。
そのため、これまでは「●●小学校まで300m」と記載していたのに対し、改正後は「●●小学校まで徒歩4分」「●●小学校まで300m(徒歩4分)」との表示もできるようになるのです。
値下げ前と値下げ後の販売価格をどちらも表示する二重価格については、値下げ前の価格が公表された日過去の価格がいつ公表され、いつ値下げされたのかを記載して、値下げ直前の価格を使用することとなりました。
これまでは、値下げ前の価格が公示されてから3か月以上販売されていることが条件となっていましたが、改正後は、値下げ前の価格で2か月以上販売されていることに、期間が短縮されています。
まとめ
表示規約などは、変更されたことでこれまで通りの明示ができなくなる点もあります。
まずは変更された箇所について確認し、自社の広告等で該当部分があれば修正しましょう。
強化されるものは施行日前に変更しておいても良いのですが、緩和される部分については施行日前に先取りすると、現行規定に違反する可能性もあるので注意しましょう。